三億年を、
手のひらに

恐竜より古い植物が、江戸の粋をまとって、いまも生きている。 Older than the dinosaurs, dressed in Edo elegance — and still alive today.

Chapter 0 — The Awakening

枯れたのではない。
眠っているだけ

イワヒバは、水が足りなくなると葉を内へ巻き込み、仮死のように眠ります。
そして雨ひと粒で、ふたたび緑にひらく——人はこれを「復活草」と呼びました。 When thirsty, it curls inward and sleeps. One rain, and it unfurls green again — the resurrection plant.

巻いて眠る姿もまた、愛好家には「休む姿の美」とされます。乾燥は枯死ではありません。
Even the curled, sleeping form is admired. Dormancy is not death.

Three Wonders

はじめての人ほど、驚く。Three wonders for the very first encounter

生命の驚き

石炭紀の大森林にさかのぼる古代植物の末裔〔一般植物学〕。乾けば眠り、水で蘇る——「水が切れても枯れません!」〔出典: 日本巻柏連合会〕。枯らした…と思っても、まだ間に合うおおらかさは、忙しい現代人の味方です。

A 300-million-year lineage that forgives forgetfulness.

美の驚き

春の若緑、夏の深緑、秋の紅、冬の渋金。一鉢のなかで四季が巡る「太陽が作り出す芸術」〔出典: 日本巻柏連合会〕。同じ鉢が、ひと月ごとに別の顔を見せます。

Four seasons revolve inside a single pot.

文化の驚き

一株ごとに「富貴殿」「銀世界」と名があり、相撲の番付のような「銘鑑」が天保14年(1843)から今日まで続く〔出典: 日本巻柏連合会/沼尾鶴雄『品種の変遷』〕。野生種を観賞するだけだった中国に対し、品種に育て上げたのは日本だけ〔出典: 立花・岡村『よみがえる古典植物いわひば』〕。

Each plant bears a name, ranked like sumo wrestlers since 1843.

One Pot, Four Seasons

一鉢、十二の月。Twelve faces of one plant

同じ株を、月を変えて撮りつづけた記録です。スライダーを動かして、一年を旅してください。 The very same plant, photographed month after month. Drag the slider to travel a year.

4月 April

撮影: 連作記録(富貴殿・黄王冠・銀星冠・福寿)。冬(1〜3月)は葉を巻いて眠るため撮影記録がありません——それもまた一年の顔です。遠藤功氏 連作撮影記録(USB資料・許諾済)

The Living Ranking

植物に、番付がある。A sumo-style ranking — for plants

江戸の人々は、優れた品種を相撲の番付に見立てて格付けしました。その文化は受け継がれ、令和8年(2026)の第74号に至ります(連合会銘鑑は昭和32年の第5号から毎年発行〔出典: 日本巻柏連合会〕)。 Edo people ranked fine cultivars like sumo wrestlers. The tradition continues — the 74th edition was published in 2026.

1843
最古の番付「岩檜葉名寄取組」
74
連合会銘鑑・最新号(令和8年)
111
本サイト収蔵の銘鑑・名鑑画像
282
連合会登録品種

銘鑑を年代順にめくる — Browse the rankings

3-Minute Primer

3分でわかるイワヒバQuick questions, honest answers

そもそも、何の仲間? 花は咲くの?
シダよりさらに古い「ヒカゲノカズラ類」。種も花もなく、胞子で殖える太古からの生き方を続けています〔出典: 立花吉茂・岡村寧『よみがえる古典植物いわひば』/一般植物学〕。花は咲きませんが、そのぶん葉そのものが花のように色づきます〔出典: 日本巻柏連合会「太陽が作り出す芸術」〕。A lycophyte older than ferns. No flowers — the leaves themselves take on the colors.
むずかしくない? 枯らしそうで怖い。
水を忘れると「眠る」だけで、すぐには枯れません。失敗がリセットできるめずらしい園芸植物です。日当たりと水だけ覚えれば、ベランダでも育ちます。詳しくははじめての一鉢へ。
いくらくらいで買えるの?
普及品種なら数百円〜数千円。展示即売会では育て方を教わりながら買えます〔出典: 日本巻柏連合会「各支部の催事予定」〕。番付上位の銘品は数万円を超えることもあり——昭和27年には名品「泰平冠」の一芽が数万円(現在価値で数十万円)で取引された記録も〔出典: 沼尾鶴雄『巻柏 品種の変遷』〕。知るほどに深くなる世界です。入手先は入手ガイドに。
どれくらい生きるの?
成長はとてもゆっくりで、手のひらサイズでも10年ものです〔出典: 日本巻柏連合会公式サイト〕。書籍には100年を越える古木の記録もあり〔出典: 『趣味の古典植物』主婦の友社〕、株分けで親から子へと受け継がれてきました。あなたの一鉢が、次の世代の一鉢になります。

画面の次は、本物へ。After the screen, meet the real one

全国の展示会・即売会では、この一覧の品種たちに実際に会えます。
育てた人の声を聞きながら選ぶ最初の一鉢は、いちばん枯れません。

はじめての一鉢ガイドへ